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運送業界に残る闇、長距離自走陸送の実態

先日の休憩場所不足の記事のように、まだまだとはいえ運転手の労働環境はコンプライアンスにより改善されて来た昨今。
いわゆる430(セドリックじゃないよ!4時間につき30分の休憩の義務付け)は4時間ごとに入って休める場所があるとは限らないので運転手に不評ですが、「いつ寝ればいいの!?」っていう配車が組まれなくなったことによりようやく運転手も「今日の仕事はこれで終わり」という人間らしい生活のメリハリに恵まれつつあります。
TAKAOも元来あんまり体力がなくガツガツ稼ぐよりマイペースで楽しく仕事したい方なので、コンプライアンス遵守は大いに賛成派。

・・・ところがあることに特化することで今でも堂々とブラック運行で儲けている運送会社があります。

それが、自走陸送をやる運送会社です。
自走陸送とは、乗用車のようにキャリアカーでは運べない大きなトラックやバスをメーカーからボディーを架装するボディ屋やディーラーに運転して搬送したり、中古車市場で売れたクルマのお届け、出品者からオークション会場に搬送するなどの仕事です。
この中でも特に、オークションで解体屋さんが競り落としたスクラップの搬送は車両のコンディションが悪いこともあり非常にきつい仕事です。
新車も新車で、タバコはもちろん車内での飲食禁止という縛りも長距離になると辛いものがありますが・・・。

スクラップでもマシなほう

パワーウインドウが壊れて開けっ放しの寒〜い車両でした。が、スクラップでもマシなほう。
©TAKAO

以前、スクラップ搬送は大型運転手のスキルを利用するのにもってこいという記事を書いたことがありますが、長距離スクラップの場合は特に、職歴に「大型長距離運転手経験あり」と書けるようにするための一時的な手段であって、長く勤めるのはお勧めしません。
記事はこちら→「いきなり大きいクルマでは仕事出来ない、どうしよう!?大型運転手への最短コース!

今日はその辺りの実態を書いていこうと思います。

※これはあくまでも1番ひどいケースであることを断っておきます。全ての自走陸送会社がこうではありません。

目次

自走陸送にコンプライアンスはご意見無用の現実

自走陸送のイミフな運賃の安さ

こんな危険も存在する、零細スクラップ搬送会社

女性ドライバーには向かない仕事

自走陸送業者、白ナンバーに対する独自の運行ガイドラインや実際の国からの取り締まりを

自走陸送、白ナンバー会社に就職するなら

自走陸送にコンプライアンスはご意見無用の現実

スクラップ搬送に限らず、殆どの自走陸送は一般貨物コンプライアンスの対象外です。
何故なら通常の運送会社と違い、厳しい条件をクリアして緑ナンバーを貰って車両を自社所有するのではなく、他人のクルマに乗ったという搬送実績に応じて仮ナンバーを借りてしまえば厳しい運行管理は必要とされないからです。
必要とされないと言うと語弊がありますが、実際誰のクルマでもない車両ですからチャート紙による記録はおろか日報提出も行政に対しては違法でないものが不可能な現状ですので目を瞑られているのが現状でしょう。
事故が起きて監査が入っても言い訳が効くらしく、自走陸送が法令で営業停止になった話はあまり聞きません(キセル乗車で監査が入ったことはあるようです)。

ここに法律の穴があります。

日本陸送協会では会員にコンプライアンス遵守を奨励していますが、安い運賃で請けている零細陸送会社は入会していないパターンが殆どであり、入会していても実態としては営業ナンバーのキャリアカーやローダーの会社ではなく自走専門ですと守られていないケースが殆どです。
(一般社団法人)日本陸送協会 http://rikusoukyoukai.org
加入会社一覧のページがありますので、求職時の参考程度にご覧になるのもよし。

自走陸送のイミフな運賃の安さ

長距離の自走陸送は運賃も安く、全国各地にオールベタ(全線一般道利用)で行かないと利益が上がらない事が殆ど。
また、引き取りから納車まで15時間かかって着いたとしても、すぐに次の引取先に公共の交通手段を使って移動しなければならず、身体を休めている時間は殆ど与えられません。
また、その移動で楽をしようと特急や新幹線を使うのは次に急ぎの仕事があるとか遠くて今日中に着かないなどの場合以外は自腹になり、運行費では間に合わず持ち出しとなります。
労働環境面と給与面では、正直いいことはひとつもありません。

ちなみに運転手なら皆さんご存知の某大手トラックボディメーカーでさえ、出入りの陸送会社には700km程の行程に高速料金を出さず昼過ぎ出荷の翌日朝着という無理をさせています。
こんな走り方で見ず知らずの運転手に運ばれた新車が来て、嬉しいと思いますか?
最悪事故を起こして修理されたクルマが届くのですよ。

居眠りで追突事故を起こした搬送中の新車

居眠りで追突事故を起こした搬送中の新車

また、そもそもの運賃が安いため、よく言われる通り「自走陸送屋はキセル乗車をする」など、不正が未だにまかり通っているにも関わらず(さすがに全ての会社で黙認しているわけではありませんが)迷惑しているのは鉄道会社だけという建前で、電車が国営でなくなった今行政はこの問題に知らん顔。バレた人個人を鉄道警察が検挙するだけでは、根本的解決になりません。

思うに、キセル乗車をしないと運転手の手取りが生まれないということは労働基準法から言ったら完全にアウトです。従業員に犯罪行為を強要しているような物なので、やっていることは暴力団と変わりません。
例えば、スクラップの搬送は関西から関東までで運転手に払われるのは運行費(燃料代+そこまでの公共交通機関による移動費)と給料合わせて25,000円という法外に安い会社もありました。

これを何故国が改善しないのでしょう。

トラックの運転そのものだって、未だにコンプライアンス関係なく走り続けなければ着かないような仕事をしていれば過労や居眠りによる事故が多発するのが当たり前で、事実TAKAOが働いていた会社でも居眠りによる事故や延着は非常に多かったです。
そしてそれを、フロントガラスの飛び石など不可抗力のものも含め全額運転手負担で飼い殺しという会社も少なくありません。

こうしていまどき、キセル乗車やETCの不正利用、過積載や過労運転、覚醒剤入手などの犯罪をしないと食べていけないアンダーグラウンドな運送業が存在するわけです。

スクラップ搬送の無茶な積み方

こんな無茶をさせられることも(通称亀の子)
©TAKAO

こんな危険も存在する、零細スクラップ搬送会社

TAKAOは現在病気のため週に数日しかトラックに乗れず、そうしたスポットの仕事があるのが自走陸送しかありませんので仕方なく今でもたまにやりますが、キセル乗車などの犯罪行為をしないとやりこなせないスクラップの仕事は滅多に受けず、タイムスケジュールはキツくても運行費、交通費がきちんと別払いで出た上に給料が入ってくる新車やレンタカーの回送しかやりません。
やむない事情でスクラップを請ける時は人助けと思って、手元にお金が残らなくても他の仕事に繋げるため不正行為はせずにやります。そもそもキセル乗車のやり方がよく分かりませんし、TAKAOは病体なので何回もの乗り継ぎや座席に座れないことが困難なので自腹新幹線です。
検札時にタヌキ寝入りをしている日本人のバックパッカーはまぁ大体陸送屋でしょう。自動改札をどうやって突破するのやら・・・。
スクラップを請けていた会社に継続して勤めるのは、身の危険と薄給・マトモに電車賃を払っていた場合の持ち出しの多さが理由で辞めました。

先日、久しぶりに人づての紹介でスクラップ搬送をやったら、とっぱらい(運行経費前払い)のはずの運賃が当日はおろかいつになっても支払われず、社長さんにも連絡が取れなくなり、どうしたもんかと思って調べたら社長逮捕で署に拘留中、会社は空中分解していたという案件がありました。
もうこうなると回収不能です。
こうした自走陸送会社の違法行為を挙げていたらきりがないので、何が原因で捕まったのかは分かりません。

やはりアングラ営業がたたったんだろうと思います。

このように会社の不正経営が元で従業員が報酬を取りっぱぐれるケースが往往にしてあるのです。

女性ドライバーには向かない仕事

そもそもトラック運転手は総じて自腹の高速代のみならず外食も多く、生活用品を自宅用とは別に運行用に買い揃えなくてはなりませんからワーキングプアになりやすい職業と言えます。
飾りも自腹でしたくなっちゃいますしね・・・(^^;)
それでも自分の専用車ならばお釜やポットを積めば節約出来ますしコンプライアンスが守られれば翌日まで11時間は布団や枕のある自分の車内でカーテンを引いて休む事が出来ますが、普通に運賃や運行費が出たとしても時間の余裕の無さからそんな生活が出来ず外から寝相が丸見えで時には寝台すら無い搬送車で仮眠し、衛生用品や着替えは仮ナンバーのプレートとともに持って歩いて電車の旅もしなければならない陸送はおそらく今では運送業の中で1番大変な仕事でしょう。
長距離陸送は未だに20年前の運送業氷河期の実態のままであり、人間らしい働き方は出来ません。

長距離陸送に女性ドライバーが少ないのはやはり女性の場合、
*衛生用品や着替えがかさばること
*カーテンがないことが殆どである搬送車の中で寝姿が丸見えで着替えも出来ないこと
*スクラップの場合途中で走れない状態になった時の応急処置が難しいこと
*中古車・スクラップは車内が不潔でゴミ溜めになっていたりする
・・・などの理由からでしょう。
(逆に、荷役作業がないため、地場の新車搬送やモータープール間の移動の場合は女性ドライバーが他業種より多いかも知れません)
エアコンやヒーターが壊れていたり、パワーウインドウが動かないなどのガタもざらにあり、休むに休めないことが殆どです。

こんな仕事を続けられるのは正直男性でも短い間だと思います。

クレーンのフックに異常があったため、前が見えず運転に苦労した車両

クレーンのフックに異常があったため、前が見えず運転に苦労した車両。このように危険な状態で走らなければならないクルマも珍しくありません。
©TAKAO

自走陸送業者、白ナンバーに対する独自の運行ガイドラインや実際の国からの取り締まりを

こんなに大変なのに、先ほど書いたように運賃・労働対価が低いのも問題のひとつです。
確かに荷作業は無いし、特にスクラップの場合安い買い物にお金をかけたくないという荷主側の心情は分かる気もするのですが、労働として合法かどうかを考えたとき間違いなく黒です。
新車の場合でも、これからお客様のクルマになる商品を大事に搬送して欲しいなら何故無理なスケジュールと運賃を押し付けるのかTAKAOには理解不能です。

そうやって荷主に値切られるのが当たり前になってしまっているのは、先ほど述べたように自走陸送がコンプライアンスから取りこぼされているという現状があるせいで、運送会社側が値引きにへいへい応じるためです。

一応運賃約款はあるのですが、年々値切られています。

自走陸送をやる運送会社にも国が独自のコンプライアンスや最低運賃基準の引き上げを設けて目を光らせてくれなければ、今後も搬送車による事故や鉄道の不正乗車は減らないでしょう。
外国向けスクラップの需要もまだまだ減少しないと思うからです。

自走陸送、白ナンバー会社に就職するなら

このようにコンプライアンスの網からこぼれている状態は、白ナンバーの運送全てに言えることです。
白ナンバー営業行為の取り締まりが厳しくなって久しいですが、ダンプなどの土木関係や畜産工場などの自社便に関しては運送会社としての登記が不要。
簡単に言うと、運送そのものを請け負う会社ではなく何かしらの産業の会社の業務のためにその会社で買ったクルマはあくまでも社用車であり運送事業用としては扱われないためです。
銀行の営業や不動産屋の案内に使うクルマにわざわざ営業ナンバーがつかないのと同じ。

けれども実際には必要なスキルもやることも「トラック運転手」なわけで・・・。
大手食品工場や自販機用ジュース屋さんなんかで、自社看板をつけたトラックがズラーッと並んでいるのに全部白ナンバーとか、そういう会社も要注意ですね。運行管理、事故防止対策をどこまでやっているのかと言ったらおそらく緑ナンバーの運送会社のそれとは違うもの(会社独自のルール)でしょう。

陸送でスキルをつけようと思ったら、面接で不安な点はしっかり聞いておきましょう。
*フロントガラスほか、事故などの場合従業員の負担分は。
*運行経費や移動経費と給料は別に出るのか。
*タイムスケジュールはどうなっているか。それに見合った高速代は出るのか。
*とっぱらい(運行費+移動費+給与)の場合はどこからどこまでが幾らなのか。
*走らないスクラップの搬送時の対策、深夜の緊急連絡先は(←運行管理者は置いてても名前だけのところが多く、車両トラブル時の対策は朝まで連絡が取れないことが殆どです)。
*時給1,800円などと謳って求人広告を出している会社もありますが、それは移動費・燃料代などを含んだ金額を時間割あたり換算にしただけのトリックです。

ここで、曖昧なことを言う会社や裏技を匂わせる会社はパスした方が良いでしょう。

こんな時代遅れの商売がまかり通っている自走陸送会社。

行政がこの業態に異常を感じてくれない限り、運送業界に癌のように残り続けるダークサイド。

自分の会社に新車が入った時、場所によっては既に1000km近くメーターが回っていることに気づいておられる方も多いでしょうが、このような運ばれ方をしてきたのを知ってしまうと手放しで喜べないのではないでしょうか。