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「インプリント〜ぼっけぇ、きょうてぇ」ネタバレ付きレビュー

たまにはクルマ以外の話題もということで、今日はホラー映画をひとつ挙げてみたいと思います。

実はTAKAOはあんまりホラーを怖いと思う方ではありません。
自分自身に霊感が無いし、ユーレイなんてCGで幾らでもリアルに出来る時代だし血だって生首だって作りものなワケだし、スプラッタ的な描写にも慣れてしまいました。
逆に、ホラーでも世界観が美しいものもあり、怖くはないんだけど映像的にハマって何度も観たくなっちゃう映画、精神的な怖さがジワる映画も多いです。
今回紹介する「インプリント」や、「富江」の1作目がそんなTAKAOのお気に入り。

目次

ネタバレあらすじ(最後まで書いてあるので読みたくない人は読まないでね)
勘違いニッポンの美しさ
何故にアメリカで放映禁止になったのか
映画版の解釈

原作「ぼっけえ、きょうてえ」表紙

原作「ぼっけえ、きょうてえ」表紙
岩井志麻子・著

怖いのは、やっぱり生きてる人間なんですよね。
生きてる人間の悪意や愚かしさ、生々しい感情を感じるサイコホラーや、「クジョー」や「激突!」みたいに追い詰められる恐怖映画仕立ての方がよっぽど怖い。
そうそう、その手で言えばクリスティーン」はクルマ好きなら必見のホラーですよ!(別記事で後日紹介します)

だから王道ホラーでも、「リング」は怖かった…刻々と迫るリミット、ビデオを再生するたびに井戸から少しずつ姿を現してくる貞子。誰かがとり殺される現場よりそっちの方が怖かったです(^_^;)

ちょっと前にも「エスター」って映画がありましたがこれも考えさせられるところがあり怖かったですね。
孤児院から貰い受けた優秀な少女が実は身体も心も病に囚われた凶悪人物というサイコホラー。


さて、本題の「インプリント」ですが、岩井志麻子さんのホラー小説短編集「ぼっけぇ、きょうてぇ」表題作の映画化です。
アメリカのケーブルテレビ用企画「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズに日本人の三池 崇史監督が抜擢され、作ったはいいが全米で放送禁止になり日本でも映倫の想定外だったということで僅か数回レイトショーが上映されたのみという伝説の作品(現在はDVDで観られます)。
ちょうど、上映は「カーズ」1作目と同じ頃じゃなかったでしたっけ。

インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ 三池崇史監督 国内DVD版

インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ
三池崇史監督
国内DVD版

これの何が怖いって、主人公の女性の悲惨過ぎる生い立ちです。
会話の後ろで何かが通り過ぎたり、頭から人面瘡が出てきたりとそれなりにホラーっぽい描写もあるんですが、でもやはりそれよりショッキングなのは近親相姦やDVシーン、間引き(中絶)シーンの生々しさ、女郎の拷問シーンの痛々しさですよね。

今から100年以前におおよそ日本のどこの貧村でも起こり、語り継がれることが口はばかれた歴史の真実。

冒頭で述べたように「生きてる人間が怖い」っていうパターンであり、映画美術や演出が素晴らしく世界観が魅力的でハマりましたね〜。
映画らしくドンデン返しストーリーになっているのも面白いところ。

原作の舞台である岡山と言えば津山事件(Wikiリンクへ)でも有名ですが、あれも近代化せず因習化していた村の習慣と集団心理が招いた悲劇であり、この「ぼっけぇ、きょうてぇ」もフィクションとはいえそんなリアリティを充分感じられる気持ちの悪い作品なのです。

人面瘡はともかく絶対こんなこともあっただろうなと。

原作では、一人称のネイティヴ岡山弁での語りのみで淡々と生々しい土着因習の無節操さと貧困の底辺、そこに育った女の歪んだ人間性が貸座敷(明治時代の遊廓)の客を聞き手に見立てた形で最後まで描かれ続けます。

映画では、原作のいち女郎の一人称「妾(わたし)」による語りの代わりに、とある女郎を身請けしに来た欧米人記者と「妾」なる女郎の会話がこの忌まわしいストーリーを進めていきます。

この記者役のビリー・ドラゴ氏の執拗な半狂乱の芝居が、不気味だが楚々とした工藤夕貴さんの女郎の役づくりと非常に相性がよく、薄暗い貸座敷シーンの尺がそこそこ長いのに飽きさせません。

クリストファー(ビリー・ドラゴ演)

クリストファー(ビリー・ドラゴ演)
©2005 IDT Entertainment,Inc.

ところどころにかかるBGMもエリック・サティ風メロディラインのオルゴール調で、もの哀しく静かで必要以上に出しゃばっておらず、すべてが夢・回想だとしてもおかしくないと思わせる淡々とした雰囲気作りに一役買ってますねー。

ネタバレあらすじ(最後まで書いてあるので読みたくない人は読まないでね)

ビリー・ドラゴ演じるクリストファー(以下クリス)は、身請け(大金を積んで遊女を引き取ること)の約束をした小桃という女郎を探し渡し舟でしか辿り着けない色街に来ていた。
ところが小桃はなしのつぶて、ある店の客引きにもう今夜は陸に戻る舟は無いから女を誰か選んで泊まっていけと勧められる。
クリスは籬から手を出さずに奥の暗闇に座っている女を指名し、その女郎(以下、「妾」)に小桃のことを尋ねてみるが、小桃は首を吊って死んだという。
ショックを受けたクリスは哭き叫び暴れるが、落ち着いてから寝物語に「妾」の生い立ちの話を求める。

「妾」(工藤夕貴・演)とクリストファー(ビリー・ドラゴ・演)

酌をする「妾」(工藤夕貴・演)と登楼客のクリストファー(ビリー・ドラゴ・演)
©2005 IDT Entertainment,Inc.

「妾」は遊女としてのありきたりな身の上を語り出す。
産婆だった母、肺を患っていた父、暮らしは最低辺。
近所の寺の若い住職が、本物の血で描かれたという地獄絵を見せて教育をしてくれただけだった。
そのうち肺病の酷くなった父は家族に迷惑をかけまいと入水自殺、自分は母に惜しまれながら女衒に売られこの島に辿り着いたと…。
そしてこの店で唯一自分に優しくしてくれていた小桃にある日お内儀の翡翠の指輪が失くなったことで嫌疑がかかる。
普段から夢物語の中に居るようなポジティブな話しかしない小桃は他のスレた女郎達によく思われておらず、ここぞとばかりに寄ってたかって折檻され、その苦痛と身請けを約束してくれたクリスが来ないことに絶望し首を吊って自殺したのだと「妾」は話した。

どこでそう思ったのか、クリスは「そんなことがあるはずがない。本当のことを話せ」と「妾」に半狂乱で詰め寄る。
そこで「妾」は、指輪を盗んだのは自分であり、拷問を受けた小桃を絞殺したのも自分だと告白する。
自分のように他人に優しくされることを恐怖として感じるような人間は地獄へ堕ちる、その時に小桃が「妾」と懇意だったとすれば小桃も一緒に地獄に堕ちる、だから小桃を憎んでこの手で極楽へ送ってやったのだというのが「妾」の言い分である。
どうもよく分からない理屈である。
クリスは、まだ何か話していない真実があるだろうと「妾」にさらに話を強要する。
「ハナシテヤレ…」と、何処からか声が。
「妾」は頭を抱えてのたうち回りながら、本当の自分の身の上を語り始める。


「妾」の両親は乞食として放浪しとある村はずれの河べりに住み着いた兄と妹。
ところがこの2人は近親相姦の関係。
「妾」の母である妹は産婆と言っても堕胎専門で、その兄である「妾」の父は働かず酒が無くなると暴力を振るう典型的なアル依であった。
そんな2人の間にも子どもが産まれたが、産まれた女児は頭にもうひとつ小さな顔をつけた、双子のなり損ないだった。
驚いた母親は誰にもその子を見せず、いつも近所の農婦に堕胎を頼まれた時のように河に棄てる。
ところが2日経っても河の浅瀬に引っかかって生きている「妾」を見て、更に畏れおののき育てることにしたという。

「妾」は小さな頃から母親の仕事の手伝いをさせられて育った。
堕胎に使う毒草を育てて収穫したり、桶に入れられた水子を河に棄てて来るなど…そして頭に残った双子の姉のために顔半分が引きつり髪では隠せない奇形になって居るため、物乞い同然の貧しさと堕胎の仕事も相まって近所の子ども達にも虐げられた。
地獄絵を見せてくれた住職というのも、「妾」に道徳や仏道を教えたのではない。地獄に堕ちると脅して性的虐待をしただけだったのだ。
そんなある日、いつものように母が父に暴力を振るわれ家から追い出されると、まだ少女だった「妾」が、今度は父親の性の対象になる。
そして、頭に貼り付いた姉が、「父親を殺せ」と…。

少女期の「妾」、父親の性的虐待後

少女期の「妾」、父親の性的虐待後
©2005 IDT Entertainment,Inc.


その顔と指だけの姉は、口には歯が生えており思い通りにならないと「妾」の頭皮を血が滲むほど噛んだ。
姉の命令に抗えない「妾」は、夜中に立ち小便に出た父を後ろから木槌で撲殺。
そしてお内儀の指輪を盗んだ時も、姉に頭を噛まれそそのかされ、そうするほかなかったのだ。
そんな「妾」が姉の命令ではなく運命の翻弄でもなく、ただ一つ自分の意思で決めたこと…それが、凄惨な折檻を受けてまで「妾」を庇った優しさを持つ小桃が、既に人を殺してきたような自分のせいで地獄に行かないよう殺したことだと言う。

クリスはその狂言じみた話と「妾」の頭から覗く彼女の姉が翡翠の指輪を吐き出した姿に嫌悪を示し罵倒するが、実はクリスにも絶対口外出来ない異常な過去があった。
少女だった妹を愛し、性愛の対象にし、口封じか殺人嗜好に発展したのか分からないが惨殺したという過去が…。

五体不満足な者はよく超能力を持つと言うが、「妾」の頭から生えた物体にそれを指摘され、クリス自身が再び狂気に巻き込まれる。
クリスが取った行動は、姉なる物体を「妾」ごと銃殺する、というものだった。
2発目の銃声で倒れた「妾」が再び起き上がると、そこには頭を撃ち抜かれ脳髄を垂らしながら、なおもクリスの名を呼ぶ小桃の姿が。

警察に女郎殺しのかどで投獄されたクリスは、もうまともな人間ではなかった。
与えられたタライの水に堕胎された嬰児を見、覚えたての子守唄を歌いながら愛おしそうにタライを抱き抱える。
その背後の壁には、かつてクリスが殺した彼の妹と、小桃の姿。
果たしてその幻は…?

©2005 IDT Entertainment,Inc.

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